宅地建物取引業法

重要事項説明における水防法の説明

重要事項説明における水防法の説明

不動産取引時の重要事項説明では、宅地建物取引業法第35条第1項第2号及び、宅地建物取引業法施行令第3条第1項第36号により、水防法による制限について説明しなければなりません。水防法とは、洪水、雨水出水、津波又は高潮に際し、水災を警戒し、防御し、及びこれによる被害を軽減し、公共の安全を保持することを目的とした法律です。端的に言うと、水災による被害を軽減することを目的にした法律ということになります。
平成29年(2017年)5月19日に、水防法等の一部を改正する法律が公布され、平成29年(2017年)6月19日に施行されました。これに伴い宅地建物取引業法施行令も改正され、重要事項説明において水防法について説明が必要となりました。

宅地建物取引業法施行令 第三条
(法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限)
三十六 水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第十五条の八第一項

説明すべき制限とは

重要事項説明において説明すべき水防法の制限とは、水防法第15条の8第1項に定める届出等についてです。浸水被害軽減地区内において土地の掘削、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為をしようとする場合、行為に着手する日の30日前までに水防管理者に届出が必要であることを説明しなければなりません。
なお、水防法に基づく水害ハザードマップに関する説明については、重要事項説明書の「都市計画法、建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」を説明する欄(各法令が表になっている部分)の水防法とは別になっています。そちらについては、『重要事項説明における水防法に基づく「水害ハザードマップ」についての説明』をご覧ください。

水防法
(行為の届出等)
第十五条の八 浸水被害軽減地区内の土地において土地の掘削、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を水防管理者に届け出なければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

浸水被害軽減地区とは?

水防法第15条の6(浸水被害軽減地区の指定等)に浸水被害軽減地区について定められています。
浸水被害軽減地区は、洪水浸水想定区域内で、輪中堤防など帯状の盛土構造物や、その他の帯状の盛土構造物が存する土地の区域であって、浸水の拡大を抑制する効用があると認められるものが指定されます。
主に輪中地帯にある輪中堤防などが指定されます。集落を囲んだ輪中堤防そのものを浸水被害軽減地区に指定し保全することが目的です。
参考『浸水被害軽減地区(水防法)

輪中堤防

輪中地帯については、子供の頃、社会科の授業で習ったのを覚えておられる方もいらっしゃるでしょう。輪中とは、集落と農地を浸水被害から守るために、集落と農地の周囲を堤防で囲んだ中のことです。
木曽川、長良川、揖斐川が集中し、昔から洪水による被害が度々起こっていた地域に輪中が集まっており、輪中地帯と言われています。岐阜県、三重県、愛知県の県境あたりになります。
平成30年(2018年)3月30日、岐阜県安八郡輪之内町の福束輪中堤が全国で最初に「浸水被害軽減地区」に指定されました。
※浸水被害軽減地区は下図の中心付近(+マーク)から東西に続く輪中堤防全体に指定されています

自然堤防等

輪中のほか、洪水による浸水の拡大を防ぐ効用が求められる自然堤防等も指定の対象となります。輪中のある地域は限定されますが、自然堤防等は全国各地にあります。今後は、輪中以外の堤防構造についても浸水被害軽減地区が指定されていく可能性が高いと思います。輪中地帯以外の地域であっても、取引対象物件が指定されていないか注意が必要です。

浸水被害軽減地区の確認方法

浸水被害軽減地区に指定された場合、『浸水被害軽減地区の区域内に、浸水被害軽減地区である旨を表示した標識を設けなければならない。』(水防法第15条の7)とされていますので、現地で標識の有無を確認することで浸水被害軽減地区に指定された地区であるかわかります。

重要事項説明書への記載等について

この記事を記載した時点で、水防法による制限の説明が必要なのは、ごく一部の限られた土地のみです。(今後は浸水被害軽減地区の指定は増加すると考えられます)
浸水被害軽減地区以外は、重要事項説明書の「都市計画法、建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」を説明する欄(各法令が表になっている部分)の水防法にチェックは不要です。もし、取引対象が浸水被害軽減地区内にある場合(取引対象地内に浸水被害軽減地区を含む場合)は、以下のように重要事項説明書に記載し、浸水被害軽減地区の地図と行政が配布している届出についてのリーフレット等を別添で添付することになると思います。

重要事項説明書の記載例

「本物件は、浸水被害軽減地区に指定されています。浸水被害軽減地区内の土地において土地の掘削、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の30日前までに、●●●に届け出なければなりません。」
※●●●は水防管理者となる市町村等の名を記載
なお、水防法施行規則に基づく水害ハザードマップの説明については、重要事項説明書上は法令上の制限の欄ではなく、別の欄に記載します。水害ハザードマップがあるからといって、法令上の制限にある水防法にチェックをつける必要はありません。

※参照記事『重要事項説明における水防法に基づく「水害ハザードマップ」についての説明

水防法
(浸水被害軽減地区の指定等)
第十五条の六 水防管理者は、洪水浸水想定区域(当該区域に隣接し、又は近接する区域を含み、河川区域(河川法第六条第一項に規定する河川区域をいう。)を除く。)内で輪中堤防その他の帯状の盛土構造物が存する土地(その状況がこれに類するものとして国土交通省令で定める土地を含む。)の区域であつて浸水の拡大を抑制する効用があると認められるものを浸水被害軽減地区として指定することができる。

菊池 英司

投稿者の記事一覧

一級ファイナンシャル・プランニング技能士
公認不動産コンサルティングマスター
宅地建物取引士

不動産分野を専門とするファイナンシャルプランナー。不動産FP。
個人向けに不動産投資、不動産有効活用、住宅購入・売却のアドバイス、セミナー等を行っているほか、売買契約書や重要事項説明書の作成、不動産調査等を不動産業者、不動産鑑定士、弁護士、税理士から受託している。
2008年から空き家・留守宅管理の専門サイト「留守宅どっとネット」を運営し、自ら空き家管理の実務も行う空き家管理人。

関連記事

  1. 重要事項説明における航空法の説明
  2. 重要事項説明における水防法に基づく「水害ハザードマップ」について…
  3. 浸水被害軽減地区(水防法)
  4. 建築基準法附則第5項道路とは
  5. 重要事項説明における幹線道路の沿道の整備に関する法律(沿道整備法…
  6. 大阪市のハザードマップを地図情報サイト「マップナビおおさか」で確…
  7. 重要事項説明における都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制…
  8. 重要事項説明における踏切道改良促進法の説明

おすすめ記事

重要事項説明における幹線道路の沿道の整備に関する法律(沿道整備法)の説明

重要事項説明で説明すべき内容重要事項説明においては、幹線道路の沿道の整備に関する法律第10条に定…

浸水被害軽減地区(水防法)

浸水被害軽減地区(水防法)浸水被害軽減地区は、洪水浸水想定区域内で、輪中堤防など帯状の盛土構造物…

建築基準法附則第5項道路とは

建築基準法附則第5項道路とは建築基準法附則第5項道路とは、建築基準法の前進となる「市街地建築物法…

重要事項説明における踏切道改良促進法の説明

踏切道改良促進法の改正に伴う宅地建物取引業法施行令の改正令和3年3月31日に踏切道改良促進法等の…

重要事項説明における都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限

都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限不動産取引の重要事項説明では、法令、条例等による制…

PAGE TOP